審査員からのメッセージ

プロダクトデザイナー/法政大学教授
京都市立芸術大学卒業後、NECデザインセンター勤務を経て、1994年英国王立美術大学修士課程修了。その後ロンドンを拠点とし95年よりデザインユニット「AZUMI」として活動、05年に個人事務所「a studio」設立。T-fal(仏)やlapalma(伊)など多くの国際的企業でプロダクトデザインに携わる。FX国際デザイン賞「プロダクトオブザイヤー」(英)をはじめ国内外で数多くの賞を受賞。審査員としてもiF賞(独)などに参加。「LEM」スツールがV&A博物館(英)のパーマネントコレクションに選ばれるなど、各地の美術館に作品が収蔵されている。2016年より日本に拠点を移し、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授に就任。


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私たちの心を揺さぶり魅了するデザイン。思わず家に連れて帰りたくなるプロダクト。そのようなものに出会うことが出来れば幸せだと考えています。必要充分で生活の隙間を埋めるものは、既に市場に満ちています。オマージュやリスペクトといった言葉で微差を競い、二次創作三次創作が溢れる昨今、新鮮な視点や価値観を持ったデザインとの出会いがどれほどあるでしょう。チープなジョークではなく、生活文化や産業といった重い背景を軽やかに背負いながら、深く心を満たしてくれるプロダクトとはどういったものなのでしょうか。
この富山デザインコンペティションが、そのような意識を深く掘り下げる場となる事を期待してやみません。また、このデザインコンペティションは年齢経験不問ですので、アマチュアや学生の方々の参加も大歓迎ですが、既にプロとして活躍されているデザイナーの皆さんにとっても、新たなデザイン領域と自らの可能性に向き合う機会として、本コンペにチャレンジし商品化をめざしていただければ、これほど素晴らしい事はないと考えています。

デザインジャーナリスト
「AXIS」編集部を経て1994年に独立、企業やデザイナーの取材を行っている。主な著書に「リアライジング・デザイン」(TOTO 出版)、共著に「ウラからのぞけばオモテが見える」(佐藤オオキ氏との共著、日経 BP)、編書に「天童木工」(美術出版社) など。国際交流基金主催「WA:現代日本のデザインと調和の精神」(2008~2011年6カ国で開催)、「現代日本のデザイン100選」(2014年~)などデザイン展のキュレーションにも携わる。「London Design Biennale 2016」日本展示アドバイザリー・コミッティー、キュラトリアル・アドバイザー。桑沢デザイン研究所非常勤講師、長岡造形大学非常勤講師、首都大学東京大学院特別講師。21_21 DESIGN SIGHT アソシエイト・ディレクター。


商品化を前提とするコンペの先駆けであり、その実積によって国外からも注目されている富山デザインコンペティション。今年度の開催にあたり、デザインの魅力を改めて考え、その可能性を正面から問うテーマが掲げられたことは、デザインの力がより広範囲から期待されている現代において、デザインの本質そのものを見直す貴重な機会になるのではと感じています。
心に響き、感情に訴えるデザインとは何かを今一度考えること。生活、社会とデザインの関係をとらえ直し、周囲の素材や技術、製造方法にも丹念に目を向けてみること。私たちの周りには既に多くのプロダクトが存在していますが、大事な視点が見落とされていたり、可能性が十分に探られていない点や理由をつけて後回しにされている点なども見受けられます。それらに意義ある一石を投じることができるのも、デザインコンペの醍醐味。幅広い視点や柔軟な姿勢を忘れることなく熟考されたプロダクトによって新たな動きが起こり、かつてなかった状況が拓かれていくのだということも忘れてはなりません。着眼点と具現化に向けた発想の双方において提案者のデザインに対する想いが伝わってくる、そうした意欲的な作品に出会えることを楽しみにしています。

テキスタイルデザイナー/東京造形大学教授
多摩美術大学卒業後、粟辻博デザイン室に勤務。独立後、2005年からファブリックブランドOTTAIPNU を主催。自身のブランド以外にも、マリメッコ、カンペール、アルフレックスジャパンなど多くのブランドから作品を発表。14年、青山のスパイラルガーデンで個展「鈴木マサル傘展」を開催。15年、北日本新聞の紙面を柄でラッピングする企画「富山もよう」のデザインで第35回新聞広告賞、新聞社企画部門を受賞。16年のミラノサローネに出展したアイシン精機のブースのインスタレーションで Milano Design Award 2016、ベストエンゲージメント賞を受賞。現在、有限会社ウンピアット取締役。東京造形大学教授。


ottaipnu.com

ここ数年、生産現場でのデザイナーの役割や求められるスキルが大きく変化して来ています。テクノロジーの進化は作り手側が修練して来た造形美の視点、技術をプログラミングという従来とは違うアプローチで構築しつつあるし、マテリアルやおとし込まれる媒体、使われ方やシーンもめまぐるしく変化しています。こうした現場の中にいると、もはやデザインというものの意味すら希薄に思えてしまいがちですが、実はこうした変化は生産者側の事情という面も多分にあり、全てが消費者のニーズから来たものという訳では決してありません。
ユーザーが心から欲しいと思っているものはどういうものなのか?我々作り手はもう一度しっかりと考えなければいけないと思います。デザインはもっと人に寄り添って行くべきだし、人が思考して、デザインする事でしか生まれ得ない何かが人の心をつかみ、暮らしを豊かにして行くという、とても単純な事を信じて、手探りで探して行けば良いのだと思います。
皆さんが探り当てた「共感するプロダクト」、とても楽しみにしています。