2008 年 8 月 7 日
7月25日、日本デザインセンタープロデュース室チーフプロデューサーの紫牟田伸子さんに来県いただき、福井市で進められている「おいしいキッチン」プロジェクトのブランド戦略についてお話しをいただきました。国や地域の行政機関が支援するさまざまなデザインプロジェクトのなかでも、この「おいしいキッチン」プロジェクトは開発と販売の両面で上手くいっている事例。私たちのデザインウエーブ事業にも役立つお話しを期待して、プロジェクトの立ち上げから実施、現状についてお聞きしました。
もともと福井市でプロジェクトを立ち上げる際、デザインコンペの開催を検討されたそうです。しかし、雑多に集まってくるデザインアイデアを企業の将来ビジョンにどう活かせるのかはっきりしないまま商品開発に取りかかってしまう危険性、またデザイン単品、企業単独で成功する可能性が限りなく低いという判断から、「キッチン」という1つの空間をキーワードに複数の企業とデザイナーとのマッチングさせ、企業とデザイナーとの1対1の関係ではなく、デザインプロデューサーがその間に立つというプロジェクトの枠組みを構築されました。今の時代、必ずしも「よいデザイン=売れるデザイン」ではなく、話題になっても瞬間的なものに終わることも少なくありません。流通の仕組みをしっかりとさせ、長期間継続できるプラットフォーム、デザインのためのデザインではなく店舗で扱いやすい売れるデザインをしっかり考えられたそう。
いろいろお聞きしたなかで印象的だったのは、「デザインブランド」ではなく「プロジェクトブランド」を目指されたこと。このプロジェクトで開発される商品1点1点の強さを強調しないで、バラバラな商品アイテムでも「おいしい」という言葉で何となくひとくくりの世界を意識してもらえるようにプロジェクトイメージの構築にとても配慮されているそうです。ごちゃごちゃのキッチンでも使ってもらえるもので「おいしい空間」を作り出すというイメージを構築できるアイテムはどんなものでもOK、洗練された美しさよりも親しみやすさ、愛着、ユーモア。受け取った人が自分の記憶、捉え方でこのプロジェクトの印象を捉え直して、自分の心に返ってくるような、そんなゆるさのあるところがいいですね。
今年のデザインコンペのテーマは「素材を活かす」。ものに付随するバックグラウンドやストーリーが語れるような商品化事例を出していきたいと考えたとき、やはり富山県は素材や加工を得意とする地域。「企業の得意とする領域で商品開発 → 買いたい、使いたい → ものが生まれた背景を知りたい → 富山に行ってみたい!」 こんなふうに「もの」「消費」「人の動き」の関係が生まれるとおもしろそうです。デザインウエーブをプロジェクトブランドとして構築できる新しいイメージ戦略が必要ですね!
2008 年 7 月 29 日
メタルとガラスのワークショプ(8/29~31)に先立ち、富山の素材を知ってもらうためワークショップ参加者を対象にデザインツアーを開催しました。真ちゅう((株)二上)、ガラス(富山ガラス工房)、シリコーンゴム(富山ゴーレックス(株))、木炭アイオーティカーボン(株))とさまざまな素材を見てもらい、作品イメージを大きく膨らませていただけたと思っています。今回の訪問企業のなかで異色だったのはアイオーティカーボン(株)さん。この会社ではダム流木や家屋解体木材を回収し、それを木炭商品として再生させています。廃棄物を回収する事業とそれを再生してオリジナル商品を販売する事業とがうまくかみ合っているところにこの会社の特長があります。
炭をそのまま置いて脱臭剤などに使う商品はよく見かけますが、オリジナル商品「炭草花」はそこからもう一歩踏み込み”デザイン”の魅力をプラスしてインテリア性を高めています。ブーツキーパー、ハンガーのほか、さり気なくバッグに入れて使う携帯用脱臭材など直接触れると手が汚れやすい炭をモノトーンの草花をモチーフにしたモダンなデザインでカバーしています。
この商品は今年6月に開かれたインテリアライフスタイル展2008において、「interiorlifestyle awards JID Design Award(日本インテリアデザイナー協会賞)」を受賞しました。地域で出た廃木材を地域内で回収し新商品を開発する事業サイクルが評価されたことに加えて、優しい印象の商品パッケージによって「エコでがんばっています!」という堅苦しさを感じさせないアイテムにまとめているところも大きかったと思います。ニオイ・化学物質ガスを取り除くという、”日常的”に使ってくらしを”快適”にする商品を開発する会社のコンセプトがうまく伝わったのでしょう。
素材・機能・形状・パッケージ、そして時代の傾向を絶妙のさじ加減でまとめていくことが大切なのでしょうね。
2008 年 7 月 10 日
7月8日にnendoの佐藤オオキさんをお招きしてデザインシンポジウムを富山県で開催しました。生い立ちからnendo設立、ミラノサローネへの参加、そして現在までをデザインワークを交えてお話しいただきました。お話しの中で佐藤さんのデザインと素材との関係について「なるほど」と気づいたことがありました。
作品の中に形状記憶合金をシェードにした照明器具「hanabi」があります(作品はこちらをご覧下さい)。形状記憶合金とは、ある温度以上になった場合に予め設定した形状に変形する性質のある金属のことで、例えば20°の時はまっすぐで40°以上になると曲がった状態ということが可能です。つまり、「hanabi」は照明をつけない時はシェードが閉じ、照明をつけると照明の熱で徐々にシェードが開くという仕組みです。ハイテク素材の使い方として十分ユニークですが、「hanabi」という作品名に込められた思いを読むと、”素材を活かす”ということは”素材を見せる”こともそうですが、素材の特性を作品に”なじませる”ことだとも言えるのかなぁと思いました。
形状記憶合金が変形し、明かりが微妙な揺らぎをおこしている様子を「hanabi」と例えたとき、多くの人は「あぁ、なるほど」と感じるのではないかと思います。佐藤さんのお話しの中で「日常」「デフォルメ」という言葉が何度も出てきました。誰もが日常目にしている光景をデザインという行為でデフォルメする、しかしデザインした本人にしか分からないほどあるいは多くの人にネガティブな印象をあたえるほどデフォルメしない。同じ光景でも人はさまざまに記憶しているけれども、大きくずれない部分をきちんとつかんでデフォルメし、それが見た人の個人的な記憶と結びついてワクワク・ニンマリしている、そんな感触を得ました。「hanabi」は一般の人になじみの薄いハイテク素材の特性を作品の中にうまく溶け込ませていると思いました。
今年のコンペテーマの説明の中に、「ニヤリと納得させられるような」という表現があります。「ニヤリ」とするときってどんなときでしょうか。人それぞれの何気ない「記憶」と作品が生み出す雰囲気とが結びついて「共感」しているときや「愛着」を感じているときもきっとそうだと思います。素材の特性を見せるだけではなく、何気ない生活の中の光景にうまく溶け込ませたデザインを期待しています!
2008 年 6 月 26 日
企業まわりや展示会視察をしていて、「素材を上手く使っているな~」と感じた商品をいくつか見つけました。
・真鍮(しんちゅう)製のペンスタンド
デスクウェアにはアルミニウムやプラスチック、レザーなど商品の重量が重くならない素材がよく使われます。しかし、例えばペンスタンド。「頻繁に動かさない」、「ペンの抜き差しの時にぐらつかない」ほうが使いやすいと考えると、重くドッシリしたものがあってもいいと思います。先日、県内の鋳造メーカーを訪ねたとき見つけました! 1kgもある真鍮製のペンスタンド。デザインは鄭秀和さん、販売はクラフトデザインテクノロジーで、富山県高岡市にある鋳物メーカーが製造しています。表面仕上げとして、真田紐の織り目をモチーフにした模様がショットブラストでつけられています。ショットブラストとは樹脂などでマスキングした金属の表面にガラス粉末を吹き付け、表面に細かな凹凸をつける加工のことです。仕上がった表面はマスキングした部分に比べて光沢がないため、くっきりと模様が浮き上がってきます。
この商品を製造している鋳物メーカーの方にお話しを聞いたところ、「真鍮鋳物の重さをプラス要素として上手く利用している商品だと思いました。1kgもするデスクウェアは鋳物メーカー側からするとなかなか発想できないです。またショットブラストした部分と金属光沢とのコントラストもきれいですね」とおっしゃっていました。
クラフトデザインテクノロジーさんのホームページの「products」から「Luxury Edition」→「Brass Pen Holder」をチェックしてみてください!
・ワックスペーパーを使ったクリアファイル
美篶堂(みすずどう)さんで開かれた展示会「かみの道具展2」を見てきました。そこで見つけたのが、ワックスペーパーで作られたファイル。デザインは大治将典さん。
ワックスペーパーって?という人は「ワックスペーパー」でネット検索してください。するとこの素材で作ったバッグなどが見つかりますし、身近なところではドーナツを買ったときについてくるツルツルした紙がそれです。
A4の紙を挟むファイルといえば樹脂製のクリアファイルをよく使いますが、使っていくうちにキズや折り目がついてくると人前ではなかなか使いづらくなるもの。このワックスペーパーファイルが素材の良さを上手く使っていると感じたところは、まず素材自体の耐久性や耐水性です。少々の水がかかっても簡単には破れませんし、汚れがつきにくいです。次に、使っていくうちについていくキズや折り目が風合いにかわるところです。最初はツルツルしたテクスチャーだったものが少しずつ折り目の入ったシワシワしたテクスチャーにかわっていく様子に、商品に対する「愛着」が生まれてくるように感じました。
使い古しの風合いをもった新品ジーンズの紙製商品タグを印刷している県内企業の方に聞いたときのはなしですが、この商品の倍はわざわざタグをしわくちゃにしてから納品しているそうです。商品イメージに合ったタグが手間をかけてつけられていることによってその商品価値が高まるそう。普通、折り目やしわのついた紙は商品としてはNGになると思いますが、”気持ちのよい折り目やしわ”がつけられるのは紙だからこそと改めて思いました。
2008 年 6 月 13 日
今回のテーマは「素材を活かす」です。このテーマが意図しているところは応募要領に簡単に記載していますが、よくわからないところもあるかもしれませんので、少し補足して説明します。
例えば県内企業が商品化したシリコーンゴム製の鍋敷きがあります。シリコーンゴムの耐熱温度は200℃以上ですから、加熱した鍋を置いても全く問題ありません。耐熱性だけを考えれば鉄などの素材でもかまわないわけですが、この商品はシリコーンゴムの「柔軟性」も活かして、ぐるりと反転させるとサイズが大きくしたり小さくしたりすることができます。つまり「耐熱性」「柔軟性」「カラーバリエーション」などシリコーンゴムの特性をより多く利用しているところに、その素材でなければならないわけがあり、また大胆な使い方に驚きと納得が生まれています。
テーマ説明の中に、「思わずハッとするような」「ニヤリと納得させられるような」「してやられた!と思うような」という表現がありますが、これをどんなふうに形として伝えるか、皆さんの自由な発想に期待しています!
2008 年 6 月 13 日
富山プロダクトデザインコンペティション2008の募集概要を掲載しました。今年のテーマは「素材を活かす」。皆さまのご参加をお待ちしています!
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